株式投資をする上で独自のトレードルールを設定している人は多い。だがこのトレードルールを上手に使えている人は残念ながら少ない。それどころかマイナス要因となる場合もある。
トレードルールに限らず、どんなものでも上手に使えばプラスになり、使い方を誤ればマイナスに作用することになる。そのことを十分に理解した上でトレードルールを設定しよう。
トレードルールとはどういうものか
トレードルールというのは難しいものではない。それぞれのトレーダーがデイトレやスイングトレードで勝つためにはどうすれば良いか考えたノウハウに近い。
言わば自分だけの必勝法に近い。
本を読んだりして得た知識に加え、自分で経験したことを織り交ぜ作り上げるトレードルールはとても大切な取引ツールとなっていくことだろう。
経験を重ねることで不要と感じたものは取り除き、必要と感じたものだけを残す。そしてそこにまた新しいルールを追加して検証していく。どんどん洗練されたものになるはずだ。
個人投資家たちは一体どのようなトレードルールを設けているのだろうか。
個人投資家のトレードルール一例
・買ってから〇%下がったらロスカット
・ナンピンに関するルール(ナンピンはしない、1回まで等)
・陰線が出たら売り(順張りで買うタイプに多い)
・持ち越しをしない(デイトレーダーに多い)
・〇日以上は粘らない(スイングトレーダー)
・下がると思ったらすぐに売る
これらはほんの一例に過ぎない。それだけ様々なトレードルールが世にはある。
実際にトレードルールを見ていくと、なるほど確かにという内容ばかりだ。
デイトレで勝つために、スイングで勝つために、株式投資で勝つために必要な知識であり、守るべきルールであることは否定しない。守れれば勝てるのだろう。守れれば・・・だ。
トレードルールがデイトレに悪影響を及ぼすケース
デイトレードに限らずスイングトレードに悪影響を及ぼすケースももちろんある。
ただデイトレードに悪影響を与える危険性の方がはるかに大きい。
スイングトレードは数日スパンで見てトレードを行う。そのため反省などの回顧も数日に1回する形が基本的な流れだ。(もちろん新規買い銘柄を探すのは毎日の作業だろう)
それに対してデイトレでは毎日反省と回顧が行われることになる。
負けてしまった原因を考え、それを繰り返さないためにはどうすればいいか。
きちんと考え、悩み、答えを出すことで成長をしていく。
コツコツドカンでも勝てるようになるためには絶対に必要な作業だ。
結論から言えば勝てる。問題なく勝てる。コツコツドカンという投資スタイルは完全悪のように扱われることが多いが、果たしてそうだろうか。人間誰しもが少なからずコツコツドカンになるはずだ。 プロスペクト理論というのがある。人間の損失回避思考理[…]
この反省では、具体性がとても重要になる。抽象的な反省はあまり生きない。
詳しく見ていきたい。
デイトレの具体的な反省と抽象的な反省
例えばジャンピングキャッチをしてしまい、高値買いが原因で負けたとしよう。
このような自問自答で反省をすることが具体的な反省だ。1つ1つの原因に向き合い、対策をしっかり練ることで今後少しずつでもミスを減らしていくことが出来るだろう。
いかがだろうか。負けた原因も対策も「ルール」という言葉で片付けられてしまう。これでは本当の解決策など全くわからない。反省しても意味などないのだ。
トレードルールも完璧ではない
もう1つ付け加えよう。もしトレードルールを守ることが徹底出来るようになったとして、それは本当に勝ち続けることが出来ると言えるのだろうか。
トレードルールそのものだって完璧というわけではない。
守った上で負けることだってある。
ルールの見直しをきちんとすることが出来、ルール無視をしたことだけに反省を求めないのであればルールを設定することでのマイナス部分もなくなるだろう。
しかし人間は自分に甘い生き物である。
自分の実力で負けたことを受け入れることがなかなか出来ない。
ルール無視をしたことに敗因を求めれば、「自分で作ったルールは良かった」「自分で作った優秀なルールさえ守れれば問題なかったはずだ」という気になる。
負けた時に自己否定ではなく、自己肯定をするための手段に使われてしまうのだ。
これでは本当の意味で成長など出来るはずもない。
必ず守れるトレードルールを厳選して作る
もう今日で終わりにしよう。「ルールを破ったから負けた」という言い訳は。
そう、これは甘えからくる言い訳に過ぎない。
負けた本当の原因と向き合っていない。きちんと本当の敗因と向き合うことが出来れば必ず成長する。何度もミスを繰り返すかも知れない。だがそれでいい。
何度同じ反省をしても直らないかも知れない。だがそれでいい。
そうやって無駄と思える作業でも繰り返すことで必ず少しずつ直っていく。大切なのは自分と向き合い続けることだ。決して目を背けないようにして欲しい。
トレードルールは定期的に見直す
もしもルールを破ったのなら、そのルールにはイエローカードを、そして同じルールを2回破ったのならばレッドカードを出して当該ルールを排除してしまおう。
守れないトレードルールなど必要ないからだ。
そのまま設定しておいても悪影響を及ぼすだけでプラスには働かない。
守れない自分と向き合うことの方が100倍大切なことだから。
そう、2回もそのルールを守れないということは自分の本能を、人間の本能を無理やりねじ曲げるような言わば「理想」を求めたルールである可能性が高い。
だから土俵際まで追い詰められてもなおそのルールを守れないのだ。
そんなものは排除してしまった方が精神衛生上も良い。
出来ることと出来ないことの区別
初心者のうちやデイトレで負け続きの人はトレードルールを設定することで、この出来ることと出来ないことの区別をするのが成長という意味では最も効果的だろう。
先述したように2回同じトレードルールを破ったならばそれは自分には出来ないことだと認めよう。そして何度ピンチになっても守り続けられるルールは出来ることだ。
そうやって自分の持っているスキル、器を知るのだ。
その上で、出来ないことを出来るようになるための努力をするのか、出来ることをもっと出来るように努力するのか考えるのだ。
言ってみれば長所を伸ばす方が効率的か、短所を直す方が効率的かを考えるのだ。
トレードルールが目指すゴール
AIアルゴリズムがデイトレーダーの仕事を奪いにきている話は以前書いた。
専業デイトレーダーは日に日に減少し続けている。信用回転無制限となって以降、アベノミクスも絡み合い多くの個人投資家が財を築いた。 しかし上昇が急激ならば下落速度も速くなるのが通例。 2014年には多くの退場者が出たと言われている。[…]
トレードルールを定期的に見直し、不要なルールは排除し、繰り返し検証された後に残ったものはきっと洗練された素晴らしいトレードルールとなっていることだろう。
もちろん自分で守ることも出来るルールだ。
少し考えてみて欲しい。
デイトレーダーが相場が難しくなったと嘆きながら退場していく時代だが、代わりにAIアルゴリズムがデイトレ界で成績を伸ばしてきているという。
このAIも私たち人間の過去から相場を学んでいる。
アルゴリズムもAIや人間が設定した内容を淡々とこなすだけに過ぎない。
結局のところトレードルールを徹底し、躊躇なく実行しているのがAIアルゴリズムなのだ。我々人間はどんなに優秀なトレードルールだと思っていても一瞬の躊躇がある。
どうしても感情が入ることで一瞬のためらいが発生するのだ。
機械はこの恐怖という感情を持たない。
ここは残念ながら絶対に埋められない差だ。
トレードルールが目指すゴールはこの感情を持たないトレードであるはずだ。取るべき行動を躊躇なく取るためにルールを設定しているのではないか。
だが実際には人間にそれをやれというのは難しい。
情報量と躊躇を計算に入れて対抗
埋められない差を気にしても仕方ない。
最も効果的かつ効率的な対処法は自分のトレードルールを教え込んだAIやアルゴリズムを作ることだ。自分の考えを機械的に粛々と実行していくAIが作れればそれがベストだ。
その技術があれば、もしくは頼める相手がいればそれが一番であることは疑いようもない。
しかし多くの人にとってこれは現実的ではない。
ならば情報量でまずカバーすることだ。イナゴトレーダーたちによるイナゴトレード、イナゴタワーなど、急騰や急落の原因は探せばわかることも多い。
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AIたちはそれを知る術がない。単なるサインと誤解することもある。
これは人間の方が有利なポイントだ。
また、自分が躊躇してしまうとして、その躊躇も計算に入れることも自分が出来る対処法となる。自分をよく知ることでトレード成績も間違いなく向上するはずだ。
自分を客観的に見ることが出来ればトレード力は必ず上がる。
トレードルールをどう設定すべきか
結局のところ自分を客観的に見て必要なルールを考えるしかない。
ルールでがんじがらめにされると窮屈だという人はルールなど設定しない方がいいだろう。ルールがないと自分を制御出来ないのであればきついルールを作ればいい。
ただしもちろん守れるルールのみだ。
例えばどうしてもロスカットが出来ない人は、持ち越し禁止のルールだけ設けておくのも1つの手段だ。どんなにロスカットが嫌でも15時には強制ロスカットだ。
そうすることで損失を少しは限定することが出来る。
そして15時~翌朝9時の間に負けた額を諦めることでコツコツドカンのまま勝てる流れを作ることも出来るだろう。
筆者はトレードルールを作ること自体に賛成でも反対でもない。ただトレードルールの作り方や内容によってはマイナスに働くこともあると知っておくことは大切だ。
自分にトレードルールが必要かどうか。
今一度考えてみるといいだろう。
まとめ
ルール無視をしたから負けたという言い訳は何度も繰り返してしまいがちだ。抽象的な反省からは何も得られるものはないと強く自分に言い聞かせる必要がある。
具体的な反省をすることで人は必ず少しずつでも成長するものだ。
株式投資の世界では自分の成長がそう簡単に目に見えてわかることはない。だが確実に一歩一歩進んでいるはずだ。自分に甘えず、自分に厳しく練習していって欲しい。
その先にはきっと明るい未来が待っているはずだから。
負けた金額は潔く諦め、その先のトレーダーとしての未来は諦めないようにしよう。