相対的に勝つという意識で株式投資をしているだろうか。デイトレにおいても長期投資においても絶対的に勝つ、全ての投資機会で勝つなどということは不可能に近い。
それが出来るのは未来から来た人くらいのものだろう。
しかし多くのトレーダーがどうしても全ての投資機会で利益を出そうとしてしまい、結果的に苦労し、負けてしまう。ここを改善するためにはどうすればいいか考えていきたい。
プロスポーツに置き換えて考える
プロ野球選手がアマチュア選手と野球対決をすればかなりの確率でプロが勝つ。絶対ではなくとも、かなりの高確率だ。しかしプロ同士の対戦となるとどうだろうか。
プロ野球は大体勝率が55~70%くらいの球団が優勝となる。
絶対的な強さを誇るわけではないのだ。
3回に1回以上の確率で負けていることの方が多い。
半年間を通じて試合をする中で、口には絶対出さずとも捨て試合に近いゲームもある。戦力のバランスや体調を考えて長い目でスケジューリングしていくのだ。
全試合なんとしてでも勝ちに行ってしまえばこのバランスが完全に崩れる。
そうなると優勝争いどころか最下位争いを演じることにもなりかねない。
大きく差をつけられてしまった試合など、時にはロスカットをして翌日に向けた準備もする。出来るだけ翌日に引きずることのないよううまくコントロールすることが大事だ。
ゴルフに例えて考える
ゴルフはミスのスポーツと言われている。止まっているボールを打つのだから周りに左右されるものではない。常に自分自身との勝負になるわけだ。
ゆえにミスをした者から脱落をしていくスポーツとなる。
いや、少し言い直そう。
ミスをし、そのミスをリカバリー出来なかった者から脱落をする。
人間である以上ミスは一定の割合で出る。しかしその後ミスを挽回するリカバリーチャンスが訪れる。ここで前のミスを引きずっているようなら良いリカバリショットなど打てようはずもない。
メンタルの強さが試される場面だ。
ミスを仕方ないと割り切ることでその後のパフォーマンスを安定させる。
絶対的にナイスショットを続けることは不可能であるため、周りの選手と比べ相対的に良いショットを打ち続けることで優勝に近付くのだ。
トレーダーの話
トレーダーの話に戻そう。
株式市場は言わばプロトレーダーの主戦場だ。プロ野球選手が球場を戦場とするように、プロゴルファーがゴルフ場を戦場とするように、プロトレーダーも戦場を持っている。
ただしアマチュアも参加可能なバトルロイヤルだ。
デイトレーダー生存率が5~10%程度と言われる理由も納得出来るだろう。
プロも参戦する戦場に素人が裸同然で飛び込んでいくのだ。勝てるように成長する前に身ぐるみはがされてしまうケースは多い。
プロトレーダーは熟練の業を持っている。精神面も鍛えられている。それどころかメンタルなど関係ないAIアルゴリズムも参戦している世界だ。
そしてそんな完璧に見える彼らであってもミスをする。
ただし相対的に勝つという意識を持っているため、ミスをしてもあっさりとロスカットすることが出来る。余計な時間を使うようなことはしない。合理的な行動を取り続けるだろう。
そんな中で素人が全ての投資機会で利益を出そうと躍起になっていたらどうだろうか。
まさに良いカモでしかない。
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全ての投資機会で利益を出そうとする行為がどのような悲劇につながるかよくわかる。
全ての投資機会で利益を出そうとする代償
あらかじめ書いておく。筆者自身も時にこのような感情を持ってしまい、自分のコントロールが出来なくなる。特に自信を持ってインした時は無限ナンピンに陥る危険がある。
自信のあるポイントを否定される値動きは精神的に堪える。
自分のロジック全てを否定されたような気分になってしまうものだ。
そこで自分の正当性を主張するために一連の流れ、一連のトレードをプラスで終わらせるためにナンピンでも何でもする。結果的に取り返しのつかない負けに発展するとしても。
その1回の、その1日のミスでデイトレーダーは数日分の利益、もしくは数週間~1か月分の利益を吐き出すよう要求される。
まさにコツコツドカンの投資となるわけだが、コツコツドカンを許容する心がなければここから今度は連敗街道へ向かう可能性もある。こうなるともう修正は難しい。
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このようにならないためにも、やってしまったことは諦める気持ちを持とう。
機会損失にもつながる
1つの銘柄の含み損に縛られてしまうと解放されるまでの間、ずっと心はそこにある。
言わば心の拘束となる。心が拘束されると極端に視野が狭くなる。
他にチャンスを探しているようでも目線はすぐに保有銘柄へと戻ってしまう。こうなると普段であれば気付けるはずのチャンスにも全く気付けなくなってしまう。
また、仮にチャンスを見付けたとしても疑心暗鬼になり、決断力はいつもの半分以下だろう。
難しい。どうしても人間は2つ以上のことを同時することが難しいようだ。
後から毎回のように考える。
あの時すぐにミスを受け入れてさえいれば、他の銘柄であっさり取り返すことが出来ただろうにと。
粘りはトレーダーの力を無力化する
含み損で捕まっている時、なんとか持ち続けることを正当化しようとするだろう。
掲示板を見に行ったり業績を確認してみたり、いつもなら全くしないことも時間をかけてする。どうにか持ち続けることは苦し紛れではないことを証明したいのだ。
コツコツ勝てるようになるトレーダーは実は多い。しかしコツコツ勝てるようになったトレーダーほど勝率にこだわり、全ての投資機会で利益を出そうとするようになる。
自分がなぜコツコツ勝てるようになったのかをよく思い出して欲しい。
まだ勝てるようになっていないという人も少し想像してみて欲しい。
過去に学んだ知識や経験から、どのような時に優位性があり、どのように売買すれば勝てるのかを何度も何度も繰り返し考えて努力してきたはずだ。試行錯誤、検証もしたことだろう。
その多くの試行錯誤から得た手法、ロジックでコツコツ勝てるようになるのだ。
大勝ちしたい欲も捨ててコツコツ勝てる道を選ぶ人もいるだろう。
しかし含み損の状態だとどうだろうか。その積み上げてきた知識、経験は使えるだろうか。何一つ使えないだろう。この時点で全ての優位性が吹き飛んでしまっていることに気付くべきなのだ。
含み損で持ち続けていることを正当化する理由を探すのではなく、持ち続けることの愚かさを自分に説くことこそ自分に出来る最善の策となるだろう。
理屈と感情
先述のように筆者は今でも無限ナンピン地獄に陥ることがある。
理屈はわかっているのだ。このまま持っていてはいけないということも、さっさと次に行けば取り返せる可能性が低くないということも。それでもどうしても損切りが出来ない。
人間は理屈より感情優先で動く。
株はメンタルと言われるのがよくわかるだろう。
この感情を抑え込むことが出来るようになるには何年かかるか想像もつかない。ここには欲も絡んでくるため、お金から解放されない限り無理なのではないかとさえ思う。
それでも感情を抑え込む努力だけは続けていくべきだろう。
毎回でなくてもいい。10回に1回から始め、徐々に多くしていき、2回に1回でも出来るようになればもう合格とも言える。
そのためには何度でも何度でも自分のミスの愚かさを自分に対して説くしかない。何度でもだ。
銘柄惚れと未練の関係
銘柄惚れをしてはいけないと言われる。特定の銘柄に惚れてしまい、常に値動きを追ってしまったり、本来チャンスではない場面で買ってしまうようになることを銘柄惚れと言う。
心が乱れるという点では同じになるが、デイトレードではあまり関係がないように思える。
しかし実際には未練という形で関与してくるのだ。
銘柄そのものに惚れているわけでなくとも、チャンスと思って購入した銘柄のホールド時間が長くなると徐々に情が移ってくる。銘柄惚れに近い感覚になってくるのだ。
ホールド時間の長さと、売った後に上がったら嫌だなという気持ちは完全に正比例の関係にある。
これはほとんどの人に納得してもらえるだろう。
最初の5分でロスカットが出来れば何も問題はない。
しかしそこで切れない場合は徐々に自分が売った後に上がってしまうことを恐れるようになる。自分が売った後に株価がどうなろうと本来は気にしてはいけない。
他人の成績を気にしているようなものだ。
自分が売った後のことを考え過ぎる
・持っていれば助かるかも知れない
・こんな額のロスカットをしたらもう取り返せない
このような感情が時間とともに心を覆いつくしていくのを感じたことがあるだろう。
パチンコやスロットでも、自分がやめた後に他人が出たら嫌だなと思うことがある。その感情のせいで余計な出費が増えてしまうものだ。株も同じと考えていい。
このような感情を排除することは出来ないが、自分の成績に他人を巻き込まないことだ。
ただ、他人と比べることが出来るいうことは相対的に見ることも場合によっては出来るということだ。「今日」そして「今」相手を上回る必要はない。
プロ野球をもう一度考えよう。
捨て試合があってもいい、その敗戦によって翌日以降の結果がプラスに作用するように捨てればいいのだ。全力で取り組み過ぎて自分を見失わないようにすることが大切だ。
まとめ
少々まとまりのない記事になってしまったことをまずは率直に詫びたい。筆者の言いたいことをなんとかこの文章からうまく汲み取っていただけたら幸いだ。
一見、損に見えても先を見据えれば得をする。それがロスカットだ。
以前ブログを書いていた人でロスカットのことを損切りではなく、得切りと表現している人がいた。まさにその通りだろう。得切りという意識で目先のロスカットを心掛けよう。