デイトレーダー法人化のやり方と節税の意味|得する人・損する人

デイトレーダーが法人化、つまり会社を設立するという話はよく聞く。他にもアフィリエイターなど在宅ワークをしている人たちが法人化するケースは多い。

しかし専業トレーダーとその他在宅ワーカーの法人化では全く意味が違う。

正しい知識を持って法人化しないと得する人だけでなく損、それも大損する人が出てきてしまう制度なのだ。漠然と法人化した方が得という知識は今日で捨てて欲しい。

本記事ではトレーダーが法人化する意味、やり方について解説する。

先にデメリット部分を徹底的に洗い出していく。その後にきちんとメリット部分も書くのでどうか最後までお付き合いいただきたい。

専業デイトレーダーは法人化すべきか

この記事を読んでいるということはトレーダーの法人化に興味をお持ちということだろう。しかしもし専業トレーダーであるならば法人化はきっとしない方がいい。

つまり法人化で損する人になる可能性が高い。

確かに2017年までは住民税の申告不要制度が周知されていなかったため、法人化をすることで有利になる人も多かった。しかしこの住民税申告不要制度が周知されたのは大きい。

この制度を使えば専業トレーダーの税金は大きく緩和されるのだ。

こちらを合わせてお読みいただきたい。

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いきなりやめろと言われても納得はいかないだろう。きちんと専業トレーダーが法人化するとどうなるか詳しく解説する。

法人化していない個人投資家のままでかかる税金は上記記事内に詳しく書いてあるので、そちらを参考にして欲しい。その上で法人化した場合と比較していただきたい。

法人化した場合の税金

法人税という言葉は聞いたことがあるだろう。

800万円以下の所得にかかる法人税は15%だ。800万を超えた部分に関しては23.4%となる。個人のトレードでかかる税金は20.315%のため、一見800万円以下は得に見える。

しかし法人にかかる税金というのは法人税だけではない。

・法人税(800万円以下は15%、超えた部分は23.4%)
・地方法人税(法人税の4.4%相当)
・道府県民税
・市町村民税
・事業税

どうだろうか。800万円を大きく超えた企業、会社であればトータル約37%もの税金が取られることになる。800万円以内の所得であっても30%近い実効税率となる。

もはやこの時点でトレーダーの税金を大きく上回ってしまうのだ。

給与にも課税される

それだけではない。こうして法人税を払った後に残るお金は会社のお金だ。自分が作った会社であっても自分のお金という扱いが出来ない。ややこしいがそういうルールなのだ。

会社に残ったお金を個人で使うために給料を設定する必要がある。

自分自身に払う給料だ。

こちらはサラリーマンと同様に給与という形であるため給与所得控除などが適用されるものの、給料が高ければ社会保険税、もしくは国民健康保険税の金額は大きく跳ね上がる。

また、自分自身の給与は役員報酬という形を取り、定期同額給与でなければならない。

これは1回決めた給料の金額を1年間変えられないという制度だ。

トレード成績でムラが出来てもこれを変更することは出来ない。

例えば給料が1年間で800万円になるよう設定していたのにトレードでトントンだったとしよう。すると会社は800万円の赤字という計算となり、損失繰越が可能だ。

しかし自身の給料は800万円となる。

利益など一切出ていないのに、この800万円に所得税や住民税、健康保険税などがかかってくる。それも株式の申告分離課税とは違い、累進課税制度でかかってくる。

メリットを探すどころかデメリットを解消出来る要素さえほとんどないのがおわかりだろう。

会社の節税は可能

ややこしくなってくるので整理しながら読んで欲しい。筆者自身は会社を経営しているが、法人設立の際もそれ以降もややこしい税制を幾度となく読み返して勉強した。

本当に複雑であり、理解するのには時間がかかった。

少し安心して欲しいのは、自分に給料を出した部分は損金という形で経費に出来る。

つまり会社として300万円の収入があり、1年間で自分に支払った給料が300万円(月に25万ずつの定期同額給与)であった場合、法人税などはかからない。

法人住民税だけ赤字でも7万円かかるという具合だ。

しかし年収が300万円もあれば、国民健康保険料も20万円を超えてくるだろう。所得税や住民税もかかる。

計算をしてみると、専業トレーダーが300万円の利益を出し、源泉徴収ありで確定申告をしなかった場合と比べると法人化していた方が得という計算になる。

しかしあくまで確定申告なしの場合だ。

住民税の申告不要制度が明確化されたことで確定申告をすれば20万円近い還付金が得られる。これによって同じ300万円という年収であれば個人投資家であった方が得となってしまう。

また、これより多い金額になればなるほど法人は不利となる。

累進課税制度がデメリットとなるからだ。さらに言えばトレード成績が読めないのであれば1年間変えられない給与額も大きなデメリットとなってしまうことだろう。

そのことでさらに税金面は不利となる。

一応書いておくが、利益によって給与を減らしたり、ボーナスという形で追加支払いをすることも出来ない。厳密に言えば出来るが、税金面では不利になるだけだ。

経費部分で法人は有利

法人化することをとことん否定してきた。

しかし唯一とも言えるメリット部分は経費算入の優位性だ。

個人投資家の場合、専業デイトレーダーとして毎日パソコンにかじりついていたとしても、事業申請でもしていなければ経費として認められるようなものなどない。

法人化していれば様々な面で経費算入が認められる。

ただし何でもかんでも良いというわけではない。数年に一度行われる税務調査の時、きちんと事業に関するものであり、必要なものであることを説明出来るものに限る。

例えばパソコンやインターネット回線料などは確実に経費だ。

また、トレードルームを借りている人はそれも100%経費となる。

ただその程度の経費が認められたところでここまで書いてきた不利を跳ね返すことなど出来るはずもない。それでも強引に優位性を説くのであれば、有料情報をよく使う人だ。

投資顧問の有料情報、株のオフ会や、セミナー代、その交通費も経費になる。

高額な投資顧問情報でも経費で落とせるならば買いたいという人もいるかも知れない。

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法人化を考えるタイプはコツコツ型であるケースが多いため、どこまで有料情報を必要とするかはわからないが、ここは明確なメリット部分と言えるだろう。

社会的信頼・地位の確立

専業トレーダーは職業欄になんて書けばいいのだろうか。

「株式トレーダー」「デイトレーダー」「無職」あたりだろうか。

トレーダーという枠の中で見れば専業で出来ていること自体がすごいと思われ、地位も確立されているのだが、社会的地位という意味では全くないのが実情だ。

そのため住宅ローンなども門前払いに近い形で断られてしまう。

お金を持っていようとも関係ない。

数千万円の資産を持ったトレーダーよりも、資産なしで定収入を持っているサラリーマンの方が世間から、社会からの信頼は厚いのだ。世知辛い世の中である。

金銭的な損得で言えば損をするとしても、法人化すれば職業欄は「会社役員」だ。

経営者であり社長なのだ。社会的地位は一気に底辺から頂点へと変わる。

数年間きちんと会社経営を続ければ住宅ローンもあっさり組めるようになるだろう。

お金の面だけでは判断出来ない部分での損得勘定もある。実際に金銭面で優位性がなくなりつつあるため、法人化する人の多くはこの地位や信頼を求めているのだろう。

兼業投資家は法人化すべきか

今度は兼業トレーダーだ。他に副業がある場合の法人化は有利になる可能性もある。

株式投資の損益は申告分離課税となっていて、他と損益通算が出来ない。

しかし法人化して会社として、事業として株式投資を行えば全ての利益を合算することが出来る。

例えば事業に失敗して500万円の赤字を出してしまい、デイトレードで500万円の利益を出したとする。個人であれば100万円近い税金がかかってしまうことになる。

住民税の申告不要制度を利用しても80万円程度の税金がかかる。

しかし株トレード法人事業に入れてあれば、会社の損益がプラスマイナス0となり、税金は赤字でもかかる法人住民税の7万円のみとなる。

初めて明確に法人化のメリットが見えた瞬間だろう。

新しいことを始める場合はどうしてもそこにリスクが存在してしまう。リスク軽減という形で言えば株を法人事業の中に入れてしまうのは良い作戦とも言える。

しかし事業が成功した場合には、株式投資の利益も最終的に自分への給料という形で累進課税制度になってしまうため、損をしてしまうことになる。

やはり上を見た場合は損となるため、リスク緩和としての法人化と考えるべきだろう。

仮想通貨(暗号通貨)とも損益通算可能

2017年、一世を風靡した仮想通貨だが、税金に苦しんだ人も多いだろう。

2017年に大儲けしたものの、2018年の税金を支払う前に大負けして税金が払えずに借金となってしまった人もいるはずだ。仮想通貨は雑所得ゆえ、他と損益通算も出来ない。

しかし申告分離課税の株式投資さえ同一に計算出来るのが法人だ。

当然仮想通貨の損益も同一に計算出来る。損益通算が可能なのだ。

さらに言えば決算の締め日も年末に限らずズラすことが出来る。

仮想通貨は2018年初頭に、つまり税金面においても年をまたいで新規になってから大きな下落があったため、税金が払えなくなる悲劇を生んだわけだが、もしも決算が年末でなければ。

12月31日が締め日ではなく3月31日や6月30日といった別の月が決算だったなら。

そう、2017年10~12月の暴騰と2018年1月の暴落が別々で計算されることもなく、同一年度として計算される。リスク回避という意味では大きく意味を成す形になる。

決算期をズラすデメリット

残念なことに決算期をズラす場合、株式投資においてデメリットが生じる。

先述のように法人化した場合、株式投資は申告分離課税ではなくなる。また、会社によって決算期も異なるため、特定口座や源泉徴収ありの口座を作ることが出来ない。

全て一般口座での売買となるため、データの処理が非常に煩雑となる。

決算期を12月にしておけば、個人口座を法人として使う旨を伝えておくことで特定口座の源泉徴収ありのまま取引することも可能だ。しかしこの場合も後で税金面の調整が必要になる。

源泉徴収されるのはあくまで20.315%だが、法人取引となると全く違ってくるからだ。

また、法人決算となると通常の確定申告と勝手が違ってくる。

税理士と顧問契約までする必要はないだろうが、やはり決算書作成や提出は税理士に依頼した方が無難だろう。この場合もまた6万円前後かかってくることが予想される。

新しいことを始めたり、仮想通貨など大きな勝負ごとを前にしてリスクヘッジとして法人化するのはナシではない。仮想通貨で損失繰越が出来るのは2019年現在法人のみだ。

だが上を見た場合に株式投資で法人化するのはやはりデメリットのオンパレードと言える。

配偶者への給与支給

配偶者がいて専業主婦など他に給料がない場合は給与支給することで節税になる。

しかしこの場合は配偶者に何かしら仕事をしてもらう必要がある。

何もしていないのに給与を渡していたら節税と言うよりも租税回避行為と見られてしまうからだ。給料を支払う理由付けを作る意味でも何かしら役割を担ってもらう必要がある。

そうすることで給与所得控除が2人分使えるようになる。

リスクヘッジ以外でトレーダーが法人化する意味を見出すのであればここかも知れない。

年間200万円程度の利益をコツコツ出している場合、このように配偶者と所得を分配することでほぼ非課税にすることが出来る。もちろん法人住民税と税理士費用はかかるが。

いずれにしてもこのタイプの人は珍しく「得する人」となる。

しかし法人化を考えている時点でそれなりの利益が出ていると予想される。その場合は所得分配をしたとしても損する人となってしまうケースは多いだろう。

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法人化のやり方・方法とは

ここまで読んできて法人化したいと思った専業トレーダーはほとんどいないと思われる。

だがそれでも法人化したいというのであれば法人化すること自体は難しくない。

会計事務所等に依頼し、インターネット上でささっと記入し、法務局に提出することであっさりと法人設立は出来る。ここでも合同会社で6万円程度、株式会社なら20万円前後かかる。

もちろんこれも経費に算入出来るのだが、色々とお金はかかってくる。

法人用の印鑑や口座も作っておいた方がいいだろう。

以前はそこまでしてでも年間に10万円節税出来れば大きかった。しかし住民税の申告不要制度が周知されたことで大きなメリットだったこの部分がなくなってしまったのだ。

会社は設立時だけでなく、毎年の決算、そして解散時にも手間がかかる。

そこまでの手間をかけるくらいならば素直に個人投資家として、毎年確定申告と住民税の申告不要制度を使う手続きをする方がはるかに経済的で効率的と言えるだろう。

まとめ

トレーダーの法人化について書いてきたがいかがだっただろうか。法人化しないとしても、きちんと税制などの仕組みを理解した上で個人のままの方が得だと理解することは意味がある。

この記事を読むのに割いた時間も決して無駄ではないはずだ。法人化した方がいいのかどうか迷い、モヤモヤしていた霧は晴れたことだろう。

迷いの時間を株式投資へ有効活用出来るようになる。チャンスはいくらでもあるのだから。

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上部に貼った株の税金制度記事をよく読み、住民税の申告不要制度についてきちんと理解することが8割以上の専業トレーダーにとって大きなメリットになるはずだ。

時間も考え方によってはお金以上に大切な財産だ。大切にしよう。

参考までに筆者が登録している投資顧問無料メルマガの中でもよく使う2サイトを掲載しておく。無料銘柄だけでなく、相場概要についても無料で配信されるので重宝している。

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