1億円稼いだ人を億り人、億トレと呼ぶようになったのはいつからか。多くの人がこの言葉を知ったのは2013年のアベノミクスバブルだろう。いくら勝った人が億り人なのか。
株式投資、デイトレードで稼いだお金にも当然税金がかかる。
1億円稼いでも手元に残るお金は9000万円であった。手取りで1億円を勝つには1億1000万円強、勝たなければいけなかったのだ。
※上場株式・株式投資信託等の配当・譲渡所得等にかかる税率は2013年12月31日まで10%(所得税7%、住民税3%)が適用されていた。2014年以降は軽減税率の特例措置が廃止され、20%(所得税15%、住民税5%)の本則税率に戻った
本記事では自分で勝ったと言える金額は税引き前の収支と税引き後の収支どちらが正解なのか、そして株トレードの利益は源泉徴収あり、なしどちらにすべきか、解説する。
あらかじめ書いておきたい。
本記事は理論的に正しく解説を行うが、言ってみればどちらでも良いようなくだらない議論も多くなるだろう。株式投資の税金知識についてはこちらの記事を推奨する。
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億り人・億トレーダーの定義
冒頭で書いた部分からいこう。1億円勝った人の手取りは9000万円だ。1億円勝った人を相手取り、まだ億り人ではないという人もいた。そんなことが色んなところで話されていた。
それほど景気の良い時代でもあった。どちらでもお金持ちに変わりないのだからうらやましい話でもある。恐らく指摘した側は嫉妬心で絡んでいると推測される。
はっきり言ってどちらでも良い。
だがあえて掘り下げていくと一体どちらが正しいのだろうか。
それを読み解くにはまず税金という概念についてきちんと理解する必要がある。
だがその前にもう1つ問題提起しておこう。
これはどうだろうか。億り人だろうか、そうではないのか。
言葉のニュアンスだけで考えると、「億り人ではないけれど、億トレーダーではある」が正解なのではないかと筆者は考える。どちらでも良いと思う人が大半なのは百も承知だが。
億り人は「億る人」というイメージだ。「億る」という動詞はなくとも、億を作るイメージがある。よって純利益として1億円稼いだ人というニュアンスが近いのではないか。
※純利益が税引き前か後かについては後述する
億トレーダーというのは億を持ったトレーダーというニュアンスに取れるため、1円も稼いでなくとも元から投資金が1億円あれば億トレーダーと言えるのではないか。
これが筆者の考えた答えだ。
法人における税金という概念
税金というものをどうお考えだろうか。
1億円勝った人の純利益は1億円なのか9000万円なのか。
法人(会社)で考えた場合、当期純利益というのは税引前当期純利益から法人税や法人住民税、事業税など税金関連を全て引いたものを言う。だが税引前にも純利益という言葉が入っている。
収入から経費を引いた純利益に税金がかかり、その税金を引いたものが当期純利益となるのだ。
ややこしいが、つまり税引前、税引後どちらも「純利益」と言えるのだ。
そろそろ小難しい話は終わりにしよう。
正論を述べるためには順序立てて解説する必要があるわけだが、ごちゃごちゃした話を望む人は決して多くはないはずだ。個人の税金の話ではもっと簡潔にわかりやすくお話をする。
サラリーマンの税金という考え方
収入があり、その収入を得るためにかかった経費を引いたものが利益となる。この利益にかかるのが税金である。サラリーマンに置き換えて考えるのが最もわかりやすいだろう。
サラリーマンの給料を議論する際、月収や年収が議題となる。
『年所得』というものでさえ議題になることは一切ないと言えるほど目にしない。
年収から給与所得控除や各種控除を引いた金額が所得となる。そしてこの所得を基に税金は計算され、税金や住民税などを差し引いて残る金額のことを手取りと言っている。
整理しよう。
・所得・・・収入から経費を引いて残る金額
・税金・・・所得を基に計算される(各種控除が考慮される)
・手取り・・・所得から税金等を引いた金額
議論に上がるのは最も多い金額となる収入だ。税引前どころか給与所得控除さえされていない金額である。また、さらに重要な点がある。税金は収入から引かれるのではない。
源泉徴収されているため、そういうイメージがあるのもわかる。
だが実際は違う。自分で働き、稼いだ金額は収入だ。経費を引き、残った金額が所得。そして所得の中から税金を自分で納めている。これが正しい流れになる。
株における税金とは
これをそのまま株の税金に置き換えよう。
・所得=勝ち額から経費を引いた金額(経費がない人は収入と同じ)
・税金=所得を基に計算される(他に収益がない専業トレーダーは基礎控除や配偶者控除などの各種控除も考慮される)
・手取り=所得から税金や国民健康保険料などを引いた金額
いかがだろうか。異論、反論はないだろう。
自分で勝った金額というのは明らかに税引前のことを言う。サラリーマンの年収やボーナスがニュースになる際に手取りで報道されることがないのと同じだ。
よって税引前で1億円勝った人を億り人というのが正解だろう。
1億円勝った人は、その収入、所得を基に1000万円という税金が算出され、自分で1000万円を納めるのだ。勝った金額は1億円であることは揺るぎない事実である。
株の収益計算は税引き前が基本
2013年に議論された億り人以外にもこの話題は時々目にする。
株ブログなどで収支を書いている人が税引き前と後のどちらで書くかという話だ。
結論から言えばどちらでもいい。そもそも他人が首を突っ込む問題ではない。下らないことこの上ない。だがせっかくの機会なのでこの話題についても言及したいと思う。
2.勝った時も負けた時も税引き後
3.勝った時は税引き前で負けた時は税引き後
3番であれば問題だ。これは自分を偽ってでも良く思われたい危険なタイプだ。
だが1番と2番はどちらであっても問題ないだろう。1番の場合、勝った金額は大きく見えるが負けた時もドカン負けがそのまま出る。2番の場合、大負けしても緩和した金額が書けるのだ。
どちらで書く方が自分を良く見せるという問題ではないだろう。
そもそも、専業トレーダーであれば様々な税金対策が出来る。法人化している人もいるだろう。それだけではない。複利での勝ちを狙う人は源泉徴収なしを選択している可能性もある。
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税引き後の計算を主とした場合、人それぞれ税率も違えば控除額も違う。つまり同じ勝ち額であっても税引き後の利益、手取り額は全然違ってくるのだ。
少しでも税に対する知識があれば誰かと比べるならば税引き前で書くことは基本ということはわかるはずだ。
勘違いしないで欲しいのは、税引き後の金額をブログ等に書くことを否定しているわけではない。
どちらでも自由だと言っているのだ。あくまで比べたがる人がいれば税引き前で比べるのが基本という話だ。本来であれば他人と比べる必要などどこにもないのだから。
だが株ブログを運営していればマナーがなかったり失礼な人も出てくるため、知識は持っておいた方が良いだろう。
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ここまでの内容は一見くだらないようにも思えるが、証券口座で源泉徴収をありにすべきか、なしにすべきかという観点で言えば非常に大事な判断基準となる。
これらを踏まえて解説していきたい。
証券口座は源泉徴収ありとなしどちらが良いか
これに関しても人それぞれではあるが、どちらにもメリットとデメリットがある。
正しい知識を持って自分がどちらを選ぶべきか考えるのがいいだろう。
冒頭部分に貼った株の税金記事には専業トレーダーに有利となる証券税制の考え方について多くまとめてある。だが源泉徴収ありの口座でないと使えない内容でもある。
本記事ではメリットとデメリットをまとめるが、源泉徴収ありの専業トレーダーが節税する技については冒頭部分のリンクから株の税金記事を詳しく読み、参考にして欲しい。
それではメリットとデメリットについて書いていく。
源泉徴収ありのメリットとデメリット
・控除部分を使い切っていない場合、確定申告をすれば税金が還付される
・住民税の申告不要制度を使うことにより、確定申告をしても国民健康保険料が上がらなくなった
サラリーマン投資家などは控除部分を給与所得で使い切っているため、税還付される可能性は少ないだろう。そのため源泉徴収ありのメリットはそこまで多くない。
だが、サラリーマンは確定申告をしなくて済むという点に大きなメリットを感じるだろう。
この1点だけでも源泉徴収ありを選ぶ投資家は多い。
源泉徴収なしのメリットとデメリット
・住民税の申告不要制度が使えないため、国民健康保険料がアップする
・翌年税金を納める前に大きく負けてしまった場合、税金が払えなくなる危険がある
複利で一気に稼ぐようなタイプのトレーダーにとっては源泉徴収ありだと煩わしく感じるだろう。資金が増えれば増えるほど大きく勝てる可能性が高まるのだから。
もちろん一気に失うリスクも高くなるわけだが。
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そのため、源泉徴収がされないだけで大きなメリットを感じるトレーダーもいる。
だがこのタイプはリスクを恐れない面が強く、大勝ちした翌年、税金を納める前に大損してしまう危険性も秘める。1億円勝っても、翌年税金を納める前に1億円負けてしまえば税金が払えなくなる。
現在では復興特別所得税を含め20.315%の税金がかかるため、所持金が0に近い状態で2000万円強の借金が残ることとなるのだ。このデメリットだけは強く意識しておく必要がある。
源泉徴収の選択
以上を踏まえ、自分ではどちらが良いか判断しよう。
短期間で億り人になろうというタイプでなければ、多くは源泉徴収ありのメリットを強く感じることだろう。筆者自身も源泉徴収ありに魅力を感じ、それを選択している。
その上で当年利益に応じて住民税の申告不要制度を使い、確定申告をした方が得か、そうでないかを判断している。言わずもがな住民税の申告不要制度を使った確定申告で損をすることはない。
一見不自由にも見えるが、実は選択の自由が最も広がる方法こそ特定口座・源泉徴収ありなのだ。
きちんと整理して判断しよう。
確定申告書類を初めて作る際は不安も多くなる。こちらの動画を参考にして欲しい。
まとめ
株トレードによる利益を語るのは税引き前と後の収支どちらが正解か、税金という考え方をきちんと整理しながら解説してきた。その上で証券口座を源泉徴収すべきかどうかについてもまとめた。
誰かと比べることで自分の所持金が増えるのであれば良いが、そういうわけではない。
それでも比べたがる人はどうしても出てくるだろう。そういう人たちは自分の立場が不安で仕方ないのだ。筆者自身にもそのような時期があったからこそよくわかるつもりだ。
自分より下を見つけることで安心したい気持ちが強い。数年後、誰かと比べ、マウントを取るようなことは何の意味もない、それどころか自分にとってマイナスでしかないと気付くはずだ。
本当に努力を続け、不安がないレベルにまで到達した人はそもそもそんなことをしない。
する必要がないからだ。
もしも絡まれたら、面倒でも当記事のように正しい知識を持って対応しよう。
株式投資は、デイトレードの勝負は常に紙一重だ。
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