株に正解はない。どんなに素晴らしい理論で臨もうが負けることはある。誰が見ても玉砕覚悟のトレードで愚かしく見えても大成功してしまうことだってある。
正解がないということは必勝法もないということになる。
そういう意味ではどんな手法であっても他人のやり方を批判する権利など誰にもないのだ。
一発勝負に限れば同時に不正解もないのだが、長く仕事としてトレーダーをするのであれば不正解はやはり存在する。要は正解を探すのではなく不正解を排除することが大切なのだ。
そうすることで必勝法はなくとも、それに近付くことは出来るのだから。
必勝法という考え方
最初にお聞きしたい。パチンコ必勝法、スロット必勝本などというタイトルの雑誌がある。
これらの中身を読めばパチンコやスロットで必ず勝てるようなことが書いてあるのだろうか。それは違う。あり得ない。読んだところで必ず勝てるようになどなっていない。
だが、勝つための情報はたくさん書いてある。
これこそが投資における必勝法という考え方にも通ずる部分だ。
それは相対的に勝つための理論、すなわち期待値と呼ばれるものだ。
期待値というのは1回2回などの勝負で考えるのではなく、何十回、何百回どころか何千回、何万回もの試行回数を考えた時に勝てるかどうかという考え方だ。
期待値と確率論
期待値というのは確率論だ。確率を用いて算出することになる。
ギャンブルなどで考えればその確率をさらに金額に変換することで、いくら使えばいくら戻ってくるのかという見込み金額を算出するところまで行う。この期待値を高めることで必勝法に近付く。
例えばスロットでは機械割という名前で期待値が表示されている。
仮に最高設定を掴み、期待値が110%であれば10万円分のメダルを入れれば平均的に11万円分のメダルが出るという意味だ。そう、平均値という考え方なのだ。
しかし当然1万円入れたところでリターンが0円である可能性もある。
1万円が2万円になる可能性だってある。
つまり機械割、平均値が110%だと発表されていても一発勝負や短期勝負であれば0%にもなるし200%にもなり得るということだ。それでも期待値は110%であることに変わりない。
何千回、何万回と試行回数を増やせばどんどん110%に近付くはずだ。
運の要素を排除する
期待値を考えた時、余計な要素は入らない方がいい。パチンコやスロットにおいても運の要素が強い台と弱い台がある。当然機械割は発表されているのだがムラは出やすい。
何万回もやれば当然期待値の数字に近く収束するだろう。
しかし現実問題としてそんなに何万回も同じ台を打つことは出来ない。
期待値を追うプロとしては出来るだけ短い間隔で収束するタイプが望ましい。つまり運の要素を極力排除した台が理想的となるのだ。もちろんどの台にも運の要素はある。
ただ、コツコツやる台もあれば、中には一発逆転の狙える台も存在する。
こういう台は一発逆転の期待値も機械割の中に平均的にすでに含まれている。つまりその役を引ければ期待値を大きく上回り、引けなければ大きく下回ってしまうのだ。
これはまさに打ち手の運に左右されてしまう部分だ。
仕事として続けていくのであればこういう要素がなく、出来るだけ期待値に素直な台を打ち続ける方が精神衛生上も良いと言える。
さて、必勝法という考え方、期待値と言う考え方についてきた。
言わずもがなこのサイトは株トレード戦略室であり、パチンコ・スロット戦略室ではない。この必勝法、期待値という考え方を株式投資に当てはめるとどうなるか考えていこう。
株トレードにおける必勝法とは
株における必勝法という考え方、概念はパチンコ必勝法と同じと思えばいい。
一発勝負や短期勝負で考えるのではなく、何千回、何万回ものトレードで見た時に勝っていればいいということだ。相対的に勝つという考え方が大事ということだ。
そして相対的に勝つために必要な知識、経験こそが必勝法と言えるのだろう。
文字通り必ず勝つための方法などない。あろうはずもない。
そんなものがあれば株で勝てる人はもっと多くなる。退場してしまう人はもっと減る。
多くの人が株式市場で夢破れ退場していくのが現実だということを忘れてはいけない。多くの人が「株 必勝法」「デイトレ 必勝法」と検索してきたことだろう。
結局情報商材などにたどり着くしかなかったはずだ。
インターネットが広く流通して以降、情報商材と呼ばれる商品が世に多く出回るようになった。売っている商品のジャンルも本当にたくさんあり、タイトルを見ると魅力的なものが多い。 しかし情報商材屋は多くの人から煙たがられる存在でもある。 […]
実際に必ず勝つ方法などないとわかりつつも、必勝法という言葉の持つ力に流されるのだ。
株式投資の期待値
株の世界は当然機械割がない。言い換えれば銘柄割なのだろうが、そんなものは発表されるわけがない。それに株では銘柄割よりもタイミング割の方が重要と言えよう。
どんな銘柄であってもタイミングによっては勝つチャンスがあるのだから。
このタイミング割を100%以上になるよう考えながら行動することが株式投資における期待値を追うトレードということになるだろう。
そしてそのタイミング割を算出するためには知識と経験が必要になる。
一朝一夕で身に付くものではなく、それこそ必勝法を検索してあっさり勝てるようになるようなものではない。本やサイトで知識を詰め込み、実際に損をしながら経験を積むのだ。
そうすることでやっとタイミング割を理解出来るようになってくる。
期待値を追うことが出来るか
タイミング割が100%以上になる時がわかるようになっても、その期待値を追えるかどうかはまた別問題となる。パチンコなどのように相手が機械であれば問題なく追える。
やり続ければ必ずプラスになるはずだという根拠が明確にあるからだ。
しかしタイミング割で考えた場合、100%以上になるはずだと考えたのは自分だけであり、根拠も過去の知識や経験というものだけだ。頼りないと言ってしまえば頼りない。
数回の失敗があれば考え方そのものが揺らいでしまうだろう。
株はメンタルと言われる面もあるように、例え勝つ方法を理解していたとしても、その行動を実際に取るためのメンタルがなければ機を逸してしまうことになる。
ほぼ勝てるだろうと思っても、「いや、待てよ」と一瞬の躊躇が起こる。
いったん躊躇してしまえばなかなか次の一歩を踏み出すことは難しくなる。
知識、経験を積み、そこに心がついてくることでやっと必勝法に近付けるのだ。
自分という期待値
自分の知識に自分の経験、そして最後は自分というメンタルが鍵となる。
つまり株トレードにおける期待値を算出するには『自分』という期待値を出すことになる。
この台を打ったらどうなるかに対し、自分が株をやったら、デイトレードをやったらどうなるかという考え方である。特に心理、メンタルが入ると一気に数値化が難しくなる。
自分をいかに客観的に見ることが出来るか。
そして自分がいかにどんな時でもいつも通りの行動が取れるか。
自分という期待値を算出するにはこれらが鍵となってくる。
株で運の要素を排除するということ
これはパチンコ、スロットと同様に一発逆転にすがらないことだ。
例えば仕手株、低位株、ボロ株などと言われる銘柄をいつも取引していないのであれば、負けた時に触ったりしない方がいい。ついつい値動きが魅力に見えてしまうことがある。
日足チャートの爆発力を羨望のまなざしで見てしまうこともある。
しかし負けた時に、不調時にそういう一発逆転の勝負をして良い方に出たことなどあっただろうか。ほとんどの人はそんな経験はない。むしろ傷口を広げた経験ばかりだろう。
仮に勝ったとしてもそれは運で勝ったようなもの。
これでは相対的に勝ち続けることなど出来ない。
それどころか運で大勝ちしたことに味を占め、今後のトレードに運や不正解の要素を持ち込みかねない。長い目で見た時にそれは確実にマイナスに作用してしまうだろう。
平常運転で勝つことこそ長く勝ち続けるために必要なのだ。
デイトレード必勝法は日々変わる
デイトレに限らず株式投資において必勝法は日々変わる。
先述のように必勝法とは言っても、必ず勝つという理論ではなく、長く続けていけば勝てるという相対的に勝つためのロジックのことだが、それも変わってしまうのだ。
長期投資においては株主優待や業績判断なども重視されるため、必勝法はそこまで変わらないだろう。
しかしデイトレにおいては時代時代で大きく変わっていく。
必ず勝つ必勝法を求めても必勝法などなく、長い目で見た時に勝てるという必勝法を探し、やっと自分のものにしたとしてもあっさりその必勝法が変わっていく世界なのだ。
ジャンピングキャッチは是か非か
ジャンピングキャッチというのは急騰した株価を見て、高値に飛び付いて買うことだ。動くものに目が行き、飛び付いてしまうため、通称猫キャッチとも言われる。
行って来いチャートによって大火傷、大負けするケースも多い。
そのため絶対にやってはいけないこととされているわけだが、バブル期にはこのジャンピングキャッチこそ正義となる。慎重派は皆置いていかれてしまうのだ。
2006年~2012年頃はジャンピングキャッチをする人は勝てなかっただろう。
株価が下落基調である以上、上昇しても一過性のものが多く、長くは続かない。そのため生き残っているトレーダーは徐々に学び、ジャンピングキャッチも少なくなった。
しかし2013年、突然局面は大きく変わる。
アベノミクス相場に信用回転無制限も加わり、一気に相場は活気を取り戻した。
急騰すれば行って来いにならずそのままストップ高コース、翌朝ギャップアップは当たり前、寝て起きればお金が増えているような相場が数か月続くことになった。
まさにジャンピングキャッチが出来る人が財を築く時代だ。
それまでの相場を見て慎重になり、尻込みしていた人は大きく勝つことは出来なかったことだろう。
時代は常に変わり続ける
もちろんこれだけでは終わらない。
それまで生き残ることに正義を見出していた組は悔しい思いをし、負け続けながらも食らいついて頑張ってきたジャンピングキャッチ組は一気に大きな財を築くことに成功した。
しかしバブル相場は長く続かなかった。
2014年以降、個人投資家が好む中小型株は活気を失っていった。
それに伴いジャンピングキャッチやフルレバレッジで財を築いてきた組の退場がにわかに目立つようになった。
不正解と思われていたジャンピングキャッチが一気に脚光を浴びるも、1年でまた不正解に戻ってしまった格好だ。大きく取れずに悔しい思いをしていた組は相変わらず平常運転でおとなしい利益を重ねていたこともまた注目すべき点だ。
株で勝つための考え方
必勝法、不正解という言葉によってややこしくなってしまっている部分もあるが、重要な点だ。
・不正解・・・一時的に大きく勝てても長い目で見るとマイナスになる確率が高いやり方
この差は非常に大きい。仕事として考えるのか、ギャンブル脳で考えるかの差でもある。仕事ではなく趣味や一発狙いとして行うトレードも決して悪いわけではない。
大金持ちになれる確率という点ではそもそも宝くじよりはるかに夢がある。
仕事としての安定がないやり方だからこそそこに大金持ちになるチャンスもあるのだから。
要は自分自身がどのようなトレーダーになりたいと思っているかだ。こちらの記事にもある。
その日のデイトレード収支や株のトレード内容をブログで報告しているデイトレーダーは多い。上手な人もいれば、まだ未熟ながら自身の上達のためにブログを書いている人もいる。 また、トレーダーの多くはそんなトレード結果を書いたブログをよく探して[…]
仕事として長く続けていきたいのであれば運の要素や不正解の排除を徹底することだ。
時代の変化に順応する
トレーダーとして、デイトレーダーとして生き残っていくためには時代の変化に順応していくことが最も大切と言える。必勝法という考え方の根本は大きく変わらない。
しかしジャンピングキャッチとは言わずとも、勇気を持って飛び込まなければ利益を出せない時代もあった。AI、アルゴリズムの進化で板読みトレードはやりにくくなった。
環境というのは日々目まぐるしい速さで変わっているのだ。
現在の自分に満足しない向上心、新しい何かを取り入れようとする探求心、微調整を繰り返していくような努力、一度勝てるようになったプロトレーダーも今の自分を疑い、進化している。
上手なトレーダーは自分の実力で圧勝しているわけではないと知っている。
常に紙一重の戦いをしているという自覚がある。
勝ち組デイトレーダーと負け組デイトレーダー、いや、デイトレに限らず株のトレーダーにおいて勝ち組と負け組の違いはどこにあるか考えたことはあるだろうか。 当サイトでも勝てる人と勝てない人の特徴について取り上げたことがある。 [sit[…]
株トレードで勝っている、勝ち続けている人でさえこれだけ考え、努力を続けているのだ。
あなたがもしデイトレで勝てない、株で勝てないと悩んでいるのであれば是非改めて考えて欲しい。自分はどれだけ努力をしているのかを。本は読んだか、勉強はしたか。
少し勝てるようになった時、浮かれてこのまま勝てると調子に乗らなかったか。
お金をかけずとも出来る努力はいくらでもある。
最近では株式投資の無料情報がたくさんあり、デイトレードでも使える。以前は無料で得られる情報の質も低く、惑わされるくらいならば知らない方が良いものもたくさんあった。 しかし今では無料情報の質も格段に高まった。スイングトレードで重要なテー[…]
トレード環境はお金をかけてでもきちんと整備すべきだ。
勝ち続けているデイトレーダーはトレード環境を整備している。デイトレ環境を整えることは勝ち組トレーダーの必須条件だ。 トレードルームを始め、トレードツール、インターネット環境など、デイトレをするための環境の正しい作り方を書いていこうと思[…]
自分が甘かった部分を理解した、何か出来ることが見つかった、そう思ったのであれば今すぐに動いてみよう。明日ではない、今すぐに一歩踏み出すことが大切だ。
何かを極めること、それはどんなことであっても大変なことなのだから。
まとめ
いかがだっただろうか。負け続きだった日々の中で初めて月間プラスが出せた時、筆者自身も調子に乗り、このまま勝ち続けられると思い込んでしまった過去がある。
当然すぐにその希望は打ち砕かれることとなった。
勝ち続けている人でさえ努力をし続けている。これは言い換えれば努力を続けられる人でなければ一時的に勝つことは出来ても勝ち続けることなど不可能ということだろう。
常に現在の自分と向き合い、疑うことで後の進化につなげていけるように努力しよう。