損切り貧乏という言葉をご存知だろうか。コツコツドカンの真逆とも言える。少しの含み損に耐えることが出来ず、すぐにロスカットしてコツコツ負けてしまうことを言う。
コツコツ負けて時々ドカンと利益が出るのであれば良いが、なかなかそうもいかない。
本記事ではこの手の負け方をしてしまう人の特徴、そして直し方についても書いていく。
損切り貧乏の症状とは
コツコツドカンという言葉はよく聞くが、この損切り貧乏というのはあまり聞かない。
コツコツドカンになる人がとても多いのに対し、損切り貧乏になる人はそこまで多くない。そもそもコツコツドカンというのが人間の本質に沿った流れということは以前書いた。
結論から言えば勝てる。問題なく勝てる。コツコツドカンという投資スタイルは完全悪のように扱われることが多いが、果たしてそうだろうか。人間誰しもが少なからずコツコツドカンになるはずだ。 プロスペクト理論というのがある。人間の損失回避思考理[…]
対して損切り貧乏というのは損失回避の法則、プロスペクト理論を無視するかのように小さな含み損でさっさとロスカット行動を繰り返す。ある意味で将来性を感じることも出来る症状だ。
損切り貧乏、ロスカット貧乏と言われる症状は人間の本能とは違うため、コツコツドカンと比べると直すことはそこまで難しくないと言える。
損切り貧乏の発症経緯
人間は利益を伸ばしたくても含み益が消えてしまうことを恐れ小さなリカクをしてしまいがちだ。逆に含み損に関しては、分が悪い時でも戻ってくることに期待して粘る傾向にある。
これがコツコツドカンの正体だが、ドカン負けを繰り返すことで過度に恐怖を抱いてしまう人もいる。
少しでも含み損が膨らんでくると、このまま大きな負けに発展してしまうのではないかと恐怖する。
もしかしたら助かるかも知れないという気持ちよりも、すぐに開放されたいという気持ちが勝る。
その結果としてそこまで危なくないケースでも、株価があっさりと戻るようなケースでもロスカットをしてしまい、ほとんどの取引で微損となってしまう。
含み損を粘って大ヤケドを何度か繰り返すことで含み損に対して敏感になり過ぎてしまう。これが損切り貧乏の発症経緯である人が多い。リスク管理という意味では悪くない。
だがこれではその時間以降の「最安値」で仕入れない限りほとんどが損失となってしまう。
この病気の怖いところ
小さなロスカットを繰り返し、損失を積み上げる。これ自体はそんなに怖いことではない。コツコツドカンは悪と言う人が多いように、ロスカットが出来ないことの方が問題視される。
小さなロスカットをすることは本来良い意味で捉えられる。
この損切り貧乏という病気の怖いところは別にある。
本当に怖いのはリカクも小さいという点だ。
コツコツ負けることになるわけで、勝率は必然的に悪くなる。しかしここで時々得る利益が大きいものであれば株の理想とも言える『損小利大』のトレーダーになることが出来る。
そういう意味ではコツコツドカン型のトレーダーよりも大成功に近い位置にいるのかも知れない。
あくまで大成功だ。成功という位置にはコツコツドカン型の方が近いだろう。
しかし大成功への道はとても険しい。
今のままではコツコツ負けて時々利益という形であり、効率的に負けている。
厳しい言い方だが、これでは時間もお金も無駄に浪費しているだけだ。
どんなに自分の狙うポイントで買えても少しの含み損で恐怖に耐え切れずロスカットしてしまい、たまにうまく含み益が作れてもそれがなくなる恐怖に耐えられずリカクしてしまう。
極端なビビリ状態になっているのが損切り貧乏なのだ。
過去の大損トラウマが発症となっているため、この根は深い。
発症者の実例
筆者の近くにもこの損切り貧乏トレーダーがいた。内容を聞いてみると勝率は50%に届かない。その上リカクする時もほとんどが薄利であり、小さなものでしかなかった。
これはコツコツドカントレーダーにも多いのだが、買ってすぐに含み損を作り、そこから反発が始まったとしても「助かった」という感覚から買値撤退や薄利撤退をしてしまう。
そしてその直後に暴騰する。
もちろんリスク管理は大事だが、助かりたい一心でトレードをするのは良くない。
大きな視点、広い視野で大局的な流れを感じつつ客観的に見る必要がある。
買値撤退を繰り返すような取引はデイトレードの練習にはうってつけであるものの、実際にそのままでは勝てるはずもない。そもそもこのような戦略では時にこう考えてしまうはずだ。
「何のために株やってるんだろう」
そう思ってしまうくらいに利益も損失も小さいのだ。
例え毎日数千円ずつでも、例え時にドカン負けをしようとも、コツコツ利益を積み重ねていれば将来的な希望を自分で見出すことも出来よう。だがこの場合はどうだろうか。
日々数千円ずつコツコツ負け、勝つ時でも数千円規模。
これでどこに希望が見出せようか。
このように損切り貧乏の人は、多くの人が難関とするロスカットについてはクリアしているものの、現状のままではロスカットが出来ない人よりも勝ちに遠い存在なのだ。
損切り貧乏の直し方
損切り貧乏はコツコツドカンよりはるかに簡単に直すことが出来る。ショック療法という言葉がある。それに近い方法を取れば恐らくそんなに時間はかからず直せるだろう。
まず、過去に大損をした経験を思い出して欲しい。
ドカン負けをした時、ナンピンを駆使しなかっただろうか。
ナンピンという言葉を聞いたことがあるだろう。下手なナンピン素寒貧などという格言もあるほど危険を含んだ手法である。しかしそれでもナンピンをする人は多い。 ナンピンには危険と同時に多くの魅力も含まれているのだ。 特にデイトレードにお[…]
ナンピンという手法は勝率を高めてくれる。それも劇的に。
しかしその反面、助からなかった時に大打撃となる。これがコツコツドカンの正体だ。ナンピンを使わない人はドカン負けをほとんどしないが、コツコツ稼げるほどの勝率もない。
コツコツタイプの勝率が高いのはナンピンによって作られているからに過ぎない。
断っておくがナンピンを否定しているわけでもなく、コツコツタイプを否定しているわけでもない。筆者自身もコツコツドカンを繰り返しながら利益を出すデイトレーダーであり、これでいいと考えている。
大損トレードを目指す
ショック療法として大損をして欲しい。大損を目指してみて欲しい。
過去、ナンピンを駆使した大損経験はきっとあるだろう。しかし今回はナンピンをしないで大損を目指すのだ。これは思っているよりも難しい。大損にナンピンはつきものだからだ。
ナンピンなしで大損となるとかなりのティック数を損しなければならない。
これはこれでかなり難しいことだ。
被害妄想とネガティブからの脱却
・「私が買った瞬間に下がる」
・「私が売った瞬間に上がる」
こんな被害妄想を持っている人も多かろう。断言するがこれは被害妄想ではなく、事実だ。
AIアルゴリズムは進化している。上板を買った瞬間に冷やし玉で売りを入れる、下板に売られた瞬間、反発と見せかけた買いを入れる。こんな仕組みが実際にある。
専業デイトレーダーは日に日に減少し続けている。信用回転無制限となって以降、アベノミクスも絡み合い多くの個人投資家が財を築いた。 しかし上昇が急激ならば下落速度も速くなるのが通例。 2014年には多くの退場者が出たと言われている。[…]
それが嫌なら指値で対応することだ。買うのではなく、買わされる形を取る。売るのではなく、自分の売り指値が買われる形を取る。これでその被害からは脱却出来る。
この被害があるからこそもっと悪く考えてしまう被害妄想、ネガティブが生まれてしまうのだ。
株トレードの大損は偶然ではない
さて、大損をしようとチャレンジして果たして大損が出来るだろうか。
答えはNOだ。偶然の産物で大損してしまうことはあるが、多くの大損は偶然ではなく必然で生まれる。
株で大損した人を何人も見てきた。退場者を何人も見てきた。億を掴んでから破産に追い込まれた人も見てきた。そして筆者自身も株で大損をした経験者である。 株で大損する人の流れ、特徴とはどのようなものだろうか。 株[…]
リスキーに見えるような株を買ったところで簡単に大損出来るわけではない。むしろ大損しようと思って買ったトレードが大勝ちになってしまうことさえあるだろう。
大損の入り口は得てして安全に見える株の安易な打診買いにある。
ここから安全な株だと信じ込み、下がってもナンピンで対処する。
せめてここで異変に気付けば良いのだが、そうもいかない。
何かがおかしいと気付いた時には多くの株数を抱えてしまい、大勝負を強いられていることだろう。この大損もナンピンさえしていなければそこまでの大打撃にはなっていないはずだ。
相場は自分主体でないことを知る
相場は決して自分主体ではない。
自分が買ったら下がりそう、売ったら上がりそうというのは妄想に過ぎず、実際には資金の少ない個人投資家など空気のようなものだ。後ろで誰かが見ているわけでもあるまい。
大損してしまうかも知れないという恐怖も過去の体験から自分で作り出した幻影に過ぎない。
そう、大損するのも簡単ではないのだ。
かもしれない、かもしれないと怯えていては何も生み出すことは出来ない。
だがこの恐怖を拭い去ることは容易ではない。それはわかる。
だからこそ本記事で書いてきたように、試しに大損トレードを目指してみて欲しい。毎日のようにコツコツ負けていれば負け額もいつのまにか大損トレードを超えているだろう。
このままではズルズルと負け続ける可能性が高い。
ならば1回の大損を受け入れる覚悟を決めよう。
その上でナンピンをせず大損するトレードを目指してみよう。当然ホールド時間は長くなる。大損が目標であれば含み損を伸ばす必要がある。少なくとも損切り貧乏にはなれないはずだ。
そこできっと気付く。相場は決してあなたを狙い撃ちしているわけではないと。
自分が買えば下がり、売れば上がるという自分主体の相場ではないと。
ナンピンさえしなければ、意地にさえならなければ大損など簡単には出来ないと。
確かに買った瞬間売られる、売った瞬間買われるアルゴは存在するが、時間軸を長めに取ればそんなものは気にもならない。自然な形で大損をすることなど非常に稀だと理解しよう。
持ち続ける勇気を養う
損切り貧乏を自覚している人はきっと株を保有する準備が心の中で出来ていないのだ。
銘柄惚れというのは本来いけないのだが、まずは自分の好きな銘柄を作ってみよう。
そしてその銘柄をいくらで買いたいか考えるのだ。
そして狙い通りの価格で買えたのならば、ガチホというものにチャレンジだ。初心者のうちは売り値をあまり気にする必要はない。とにかく買い値で徹底的に欲張るのだ。
「この銘柄をこの価格で買えればどんな結果になっても後悔しない」
どんな理由でもいい。こう思える銘柄を見つける努力をしてみて欲しい。
そうすることで持ち続ける勇気を養うことが出来る。
先述のようにそう簡単に大損になどならない。
買えるまでは欲しい欲しいと思っていても、買えた瞬間にネガティブ思考が顔を出し、下がるようにしか思えなくなってしまい、ロスカットに走るのが損切り貧乏の典型的な流れだ。
下がっても喜べる状況を作る
もう1つ方法がある。
それは欲しい銘柄を3分1~半分だけ購入するのだ。
そして上がった場合は利益を伸ばそうと放置し、下がった場合は買い増しをする。これはナンピンだが、計画的なナンピンであり、ヤケで行うナンピンとはワケが違う。
下がっても良し、上がっても良しという状況を強制的に作り上げるのだ。
そうすると下がった場合は含み損を拡大させながら内心ではもっと下がってOKと考えるというなんとも不思議な状況が出来上がる。だがそれでいい。それでいいのだ。
含み損に耐えるのではなく、含み損を受け止める、受け入れる練習だ。
また、ナンピン分まで買えたところでやっと当初予定していた株数の購入となるため、大損リスクは決して増えない。安心して練習に打ち込むことが出来るだろう。
自分の時間を濃くしよう
筆者は損切り貧乏ではないのだが、ロットがどうしても上げられずに微益を繰り返していた時期がある。そこで自分を奮い立たせるためにこの言葉を言ったのだ。
「自分の時間を薄めるな!」
株はパチンコやスロットと違い、自分で勝負の濃度を決められる。
薄めて勝負をすればそれはその勝負に向き合う自分の時間の価値を薄めることになる。
そんな微益や微損を繰り返すために株式投資を、デイトレードを始めたのだろうか。
違う、違うはずだ。
元々は大きな希望を、大儲け、財を築くと意気込んで参入したはずだ。
どうかここでその思いを取り戻して欲しい。何も億り人になろうとしなくてもいい。とにかく微益、微損という呪縛からまずは解き放ってあげよう。自分の時間を濃くするのだ。
損切り貧乏の人全員が大損のトラウマを抱えているわけではないだろう。
だがほとんどの人が共通して大損というリスクに恐怖しているのだ。
本記事に書いた内容の中で最も自分に合うと感じた練習方法を是非試して欲しい。
まとめ
損切り貧乏について詳しく解説してきた。何度も失敗を繰り返すことで人はどんどん臆病になり、才能さえも委縮させてしまう。どこかで思い切りも必要になるだろう。
勝てるデイトレーダーを目指すために是非こちらの記事も参考にして欲しい。
デイトレーダーとして成功するためにはどうすればいいか、多くの人が考えることだろう。過去の成功者たちの書籍やブログなどを読み、憧れを持つ人も多いだろう。 しかしそこには大きな大きな落とし穴もある。 本記事ではデイトレーダーを目指す[…]
自分と向き合い、まずは己の恐怖心を払拭する努力からだ。
筆者は株を始めてすぐに1つの銘柄に惚れてしまい、長く持ち続けた。結局その銘柄で200万円以上の損をしただろうか。だがその経験は後のトレードに生きていると確信している。
いけないのは大損することではない、その大損から何も生み出さないことだ。
自分が進化すればその大損も無駄にはならないのだから。